採用コラム 2025年04月22日

電子回路設計エンジニアの仕事とキャリアパス

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電子回路設計エンジニアは、現代社会を支えるあらゆる電子機器の核となる回路を設計・開発する専門職です。スマートフォンから産業機械まで、私たちの生活に欠かせない製品の心臓部を創り出す技術者として、高い専門性と論理的な思考力、緻密な設計力が求められる職業です。

この記事では、電子回路設計エンジニアの具体的な仕事内容から必要なスキル、キャリアパス、年収相場まで詳しく解説します。未経験からの転職方法や効果的なスキルアップの方法も含めて、電子回路設計エンジニアとしての充実したキャリアを築くための実践的な情報をお届けします。

01 電子回路設計エンジニアの仕事概要

電子回路設計エンジニアの業務は、製品の要求仕様に基づいて最適な回路を設計することから始まり、量産移行まで幅広い工程を担当します。アナログとデジタル両方の回路技術を駆使して、実用的で高性能な電子システムを創造する専門性の高い職種です。

要件定義から量産移行までの業務フロー例

電子回路設計の業務は段階的なプロセスで進行します。最初の要件定義では、顧客のニーズを技術仕様に変換し、回路の基本構想を策定します。設計フェーズでは、回路図作成、部品選定、性能シミュレーションを実施し、理論的な検証を行います。

試作段階では、実際に基板を製作して動作確認を行い、設計仕様との適合性を評価します。量産移行では、製造工程での品質管理や歩留まり向上を目指した最適化を実施します。たとえば、センサー信号処理回路の場合、入力信号の特性分析から始まり、増幅回路やフィルタ回路の設計、基板レイアウト、評価試験まで一連の工程を担当します。

株式会社三央のようなシステムメーカーでも、設計から現場での運転指導まで一連のシステム提供を行っており、総合的なエンジニアリング能力が重要な要素となっています。

アナログ回路設計とデジタル回路設計の違い

アナログ回路設計は連続的な信号を扱う技術で、オペアンプを使った増幅回路や電源回路、センサー信号処理回路などが主な対象となります。温度特性や部品のばらつきを考慮した余裕のある設計が重要で、ノイズ対策も重要な技術要素です。

デジタル回路設計では論理回路やマイコン周辺回路を扱い、FPGA(Field-Programmable Gate Array)やマイコンを使ったシステム設計が中心となります。タイミング制約やクロック設計に重点を置き、VHDL(VHSIC Hardware Description Language)やVerilogなどのハードウェア記述言語を使用します。

実際のプロジェクトでは、アナログとデジタル両方の技術を組み合わせた混在回路の設計が多く、両分野の知識を併せ持つエンジニアの需要が高まっています。

02 電子回路設計エンジニアに向いている人と仕事のやりがい

電子回路設計エンジニアには論理的思考力と創造性の両方が求められます。複雑な技術的課題を解決し、新しい価値を生み出すことにやりがいを感じられる人に適した職種です。継続的な学習意欲と細部への注意力も重要な特性となります。

求められる思考特性とスキルセット

電子回路設計エンジニアには、問題を体系的に分析し、最適解を見つける論理的思考力が不可欠です。複雑な回路動作を理解し、予期しない問題に対して創造的な解決策を提案する能力が求められます。

技術的なスキルとしては、電気回路理論の深い理解、各種電子部品の特性把握、シミュレーションツールの活用能力が必要です。たとえば、オペアンプの入力オフセット電圧やドリフト特性を考慮して実用的な回路を設計する知識や、高速デジタル信号における信号品質の維持技術などが求められます。

また、チームワークを重視したコミュニケーション能力も重要で、機械設計者やソフトウェア開発者との協調作業が日常的に発生します。株式会社三央が求める自律型社員のように、主体的に考え、問題意識を持って改善に取り組む姿勢が重要です。

※実務では、設計だけでなく、試作評価や製造部門との連携も発生することもあるため、“設計して終わり”ではなく、一貫したものづくりの視点が求められます。

プロジェクトを通じた達成感とキャリアの醍醐味

電子回路設計の最大のやりがいは、自分が設計した回路が実際の製品として形になり、社会で活用されることです。例えば、設計したセンサー回路が医療機器で患者の診断に役立ったり、産業機械の制御回路が製造現場の効率向上に貢献したりする瞬間は、技術者として大きな達成感を得られる機会です。

技術的な成長も大きな魅力で、日々進歩する電子技術の最前線で働くことにより、常に新しい知識とスキルを習得できます。業界によっては、最新の半導体デバイスの活用方法や、IoT(Internet of Things)システムの設計技術など、時代の最先端技術に触れる機会があります。

キャリアの醍醐味として、技術スペシャリストとマネジメント職の両方向への発展可能性があり、個人の志向に応じて多様なキャリアパスを選択できる点も魅力的です。

03 必須ツール・ソフトウェアと実務活用法

電子回路設計では、各工程に応じた専用ツールやソフトウェアの活用が求められます。使用するツールは企業や担当領域によって異なりますが、設計品質の向上や効率化のために、次のような技術を実務で取り入れているケースが多く見られます。

SPICE系シミュレータで性能検証を行う

SPICE(Simulation Program with Integrated Circuit Emphasis)系シミュレータは、回路設計の検証に広く用いられています。LTspiceやPSpiceなどが代表的で、実際に基板を製作する前に、仮想環境で動作を確認できるため、設計の確度を高めるうえで有効です。

DC解析、AC解析、過渡解析などを活用し、スイッチング電源やアナログ増幅回路などの特性を事前に評価できます。また、温度特性や部品ばらつきを考慮したモンテカルロ解析を取り入れることで、現実的な使用環境を想定したシミュレーションも可能です。

部品メーカーが提供するSPICEモデルを活用すれば、より正確な解析結果が得られます。

PCB CAD(Altium・Cadenceなど)による基板設計

回路設計後は、PCB(プリント基板)の設計作業へと進みます。使用されるCADツールには、Altium DesignerやCadence Allegro PCB Editorなどがあり、設計・製造の現場で高いシェアを誇っています。

これらのツールでは、回路図作成からレイアウト設計、配線設計、電源・信号ノイズ対策まで一貫して行えます。企業によってはKiCadやEAGLEなどの軽量ツールを使用している場合もありますが、いずれも可読性の高い回路図や、信号品質を意識したレイアウト設計が重要です。

特に、高速信号線のインピーダンス制御や、アナログ・デジタル信号の分離、グランド設計といった基礎設計の工夫が、最終的な製品性能に直結します。

試作評価試作・評価工程と測定スキルの活用

設計後、試作基板を用いて実際の動作を確認する工程があります。すべての設計者が実装や測定を担当するわけではありませんが、基本的な工程を理解しておくことで、チーム間の連携や問題発見がスムーズになります。

実装工程では、表面実装部品(SMD)をハンダ付けする技術や、リフロー炉・ホットエアーステーションを用いた精密作業が行われます。評価工程では、オシロスコープやスペクトラムアナライザ、ネットワークアナライザなどの測定機器を用いて、信号波形、ジッタ、EMC特性などを確認します。

たとえば、オシロスコープで立ち上がり時間を計測したり、スペクトラムアナライザでノイズスペクトルを確認したりすることで、設計の適合性や改善点を把握できます。

04 必要資格とスキルアップのロードマップ

電子回路設計エンジニアとしてのキャリアを築くためには、基礎理論から応用技術までの体系的なスキル習得が欠かせません。資格の取得や学習の積み重ねを通じて、自身の技術力を客観的に証明することは、キャリアアップの大きな助けとなります。

電子回路設計に関連する有効な資格

CAD利用技術者試験(2D/3D)
設計ツールの基礎的な操作スキルを証明できる民間資格で、電子回路専用CAD(Altium、OrCADなど)とは分野が異なりますが、設計業務における図面理解やツール操作の基本素養を身につけるうえで役立ちます。

電気主任技術者試験(第1~3種)
電源回路や安全設計が業務に含まれる場合は、取得しておくことでより高度な設計案件や保守関連業務への理解を深めることが可能です。特に、電源・高圧系の設計に関わるエンジニアにとっては評価されやすい資格です。

基本情報技術者・応用情報技術者試験
マイコン制御やデジタル回路の設計に携わる場合、プログラミングや情報処理の基礎を体系的に学べるこれらの資格は、回路設計だけでなく、組込ソフトウェアとの連携を理解するうえでも有効です。

技術士(電気電子部門)
高度な専門性と豊富な実務経験を要する国家資格です。中堅~シニア層での技術的リーダーやマネジメント職を目指す場合、取得によって信頼性と専門性を大きく高めることができます。

書籍・オンライン講座を活用したスキルアップ

電子回路設計の基礎学習には、「アナログ電子回路」(Paul Horowitz著)や「ディジタル回路設計とコンピュータアーキテクチャ」(David Money Harris著)などの定評ある教科書が推奨されます。これらの書籍は理論と実践をバランス良く学習できる内容となっています。

オンライン学習では、CourseraやedXなどのプラットフォームで、著名大学の電子工学コースを受講できます。動画による視覚的な学習と、実際のシミュレーション演習を組み合わせることで、効率的にスキルを習得できます。

専門技術の継続的な学習には、IEEE XploreやElectronics Weeklyなどの技術情報源が有効です。最新の研究動向や業界のベストプラクティスを定期的に学習することで、技術力の向上を図ることが重要です。

05 キャリアパスモデルと年収相場

電子回路設計エンジニアのキャリアは、技術スペシャリストとマネジメント職の両方向に発展する可能性があります。経験年数と専門性に応じて段階的なキャリアアップが期待でき、個人の志向に合わせた多様な選択肢があります。

ジュニアエンジニア~リード設計者の年収レンジ

新人エンジニア(経験1〜3年)は、基本的な回路設計スキルの習得が主な目標となります。この段階での年収は300万円〜450万円程度が相場で、アナログ・デジタル両方の基本回路設計技術を身につけることが重要です。

ミドルレベルのエンジニア(経験3〜7年)では、システム全体を見渡した設計ができる能力が求められます。年収は400万円〜650万円程度となり、複数のプロジェクトを並行して担当する機会も増えてきます。

リード設計者(経験7年以上)では、技術的なリーダーシップを発揮し、チーム全体の技術力向上に貢献する役割が期待されます。年収は600万円〜850万円程度が目安で、新人エンジニアの指導や技術方針の策定にも関与します。

設計部門マネージャー・専門コンサルタントへの昇進例

設計部門マネージャーは、技術的な専門性に加えて、プロジェクト管理とチームマネジメントのスキルが必要です。複数のプロジェクトを同時進行で管理し、納期とコストを両立させる能力が求められます。年収は700万円〜1200万円程度となります。

専門コンサルタントへの道では、特定分野での深い専門知識と豊富な実務経験を活かして、技術的なアドバイザリー業務を担当します。独立して技術コンサルティング会社を設立する選択肢もあり、年収は案件により大きく変動します。

株式会社三央のような技術系企業では、能力等級制度により技術者の専門性を適切に評価し、成果に応じた業績賞与制度も整備されているため、技術力向上のモチベーション維持につながる環境が整っています。

キャリアレベル 経験年数 主な業務内容 年収目安
ジュニアエンジニア 1-3年 基本回路設計、評価補助 300-450万円
ミドルエンジニア 3-7年 システム設計、プロジェクト担当 400-650万円
シニアエンジニア・リード設計者 7-12年 技術リーダー、新技術開発 600-850万円
設計マネージャー 10年以上 チーム管理、技術戦略策定 700-1200万円

※上記は参考目安となり、年収レンジは地域や企業規模によって異なります。

06 ポートフォリオ作成と転職対策

電子回路設計エンジニアの転職活動では、技術力を具体的に示すポートフォリオの作成が重要です。実際の設計事例と技術的な成果を効果的にアピールし、面接での技術的な質問に適切に対応できる準備が必要となります。

試作基板・GitHub公開例で魅せる成果物

効果的なポートフォリオには、実際に製作した試作基板の写真、回路図、評価結果を含めることが重要です。設計コンセプト、技術的な課題と解決方法、最終的な性能評価結果を体系的に整理して提示します。

GitHubを活用したポートフォリオでは、回路図ファイル、PCB設計データ、シミュレーション結果などを公開し、技術力を具体的に示すことができます。READMEファイルには、プロジェクトの目的、設計プロセス、技術的な工夫点を詳細に記載します。

成果物の説明では、設計仕様との比較や改善点の明確化も重要です。たとえば、センサー信号処理回路では、目標精度に対する実測値、ノイズ性能、温度特性などの具体的なデータを示すことで、技術力の高さをアピールできます。

技術面接でのよくある質問と効果的な回答

技術面接では、「オペアンプの基本動作を説明してください」や「デジタル回路でのセットアップ時間とは何ですか」などの基礎的な質問から始まることが多いです。これらの質問には、理論的な説明と実際の設計での注意点を組み合わせて回答することが効果的です。

実務経験に関する質問では、具体的なプロジェクト事例を準備しておくことが重要です。設計仕様、技術的な課題、解決方法、最終的な成果を順序立てて説明できるように準備し、チームワークや問題解決能力についてのエピソードも用意しておきます。

ノイズ対策やシミュレーション検証に関する質問では、実際の対策事例を示すことが重要です。使用したツールと検証方法、部品モデルの精度による影響、シミュレーションの限界などについても理解を示すことで、実務レベルでの技術力をアピールできます。

07 まとめ

電子回路設計エンジニアは、技術の進歩とともに需要が継続的に拡大している魅力的な職種です。継続的な学習と実践的な経験の積み重ねにより、社会に貢献する技術者として充実したキャリアを築くことができるでしょう。

株式会社三央では、水・土・空気分野のシステムメーカーとして、フィールドエンジニアリング職や機械・システム設計職において電気・制御関係に強い技術者を求めています。東証プライム上場企業のグループとして安定した基盤を持ちながら、環境事業と土木事業という社会インフラを支える重要な分野で技術力を発揮できる環境が整っています。

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